トリマーが語る!身に覚えのない怪我への誠実な対応とは?

トリミングサロンで働くトリマーにとって、「身に覚えのない怪我」は最も心が痛むトラブルのひとつです。飼い主さまから「この傷、帰ってから気づいたんですが…」と伝えられた瞬間、プロとしての責任感や葛藤、不安、そして飼い主さんに対する申し訳なさが一気に押し寄せてきます。

トリミングは、動物の健康と美しさを守るための大切な仕事ですが、どれだけ注意を払っていても、時には「施術中に気づかなかった怪我」や「本当に自分の過失なのか判断が難しいトラブル」が発生することもあります。

今回の記事では、トリマーの立場から「身に覚えのない怪我」にどう向き合い、どのように誠意を持って対応しているのか、現場での実例や信頼関係の築き方、トラブルを未然に防ぐためのポイントをじっくりと解説します。

トリミング現場の「身に覚えのない怪我」

トリミングサロンでは、ワンちゃん・ネコちゃんの健康管理と美容を担うプロとして、施術中の安全には最大限の注意を払っています。しかし、どれだけ慎重に作業をしていても、帰宅後に飼い主さんから「怪我をしている」とご連絡をいただくことがあります。

この「身に覚えのない怪我」は、トリマーにとって大きなストレスであり、同時に飼い主さんの信頼を損なうリスクもはらんでいます。トリミングは、サロン到着からお迎えまで数時間に及ぶ工程です。

トリマーが直接施術していない「待機中」や「移動中」のアクシデント、または施術中に気づきにくい微細な傷や赤みも存在します。特に皮膚の薄い犬種や高齢のペット、もつれが多い被毛の場合は、シャンプーやドライヤーの摩擦で目立つ傷が後から現れることも少なくありません。

「怪我」と一言でいっても、赤みや擦り傷、切り傷、内出血、腫れなど症状は多岐にわたります。飼い主さんからすれば「預けた後にできた怪我」として心配されるのは当然ですが、トリマー側としても「本当に施術中の過失なのか?」「見落としがあったのか?」と自問する時間が始まります。

トリマーの複雑な感情

「身に覚えのない怪我」を指摘されたとき、トリマーは大きなショックを受けます。自分の施術に自信を持っていても、「もしかしたら見落としがあったのでは?」と不安になり、何より「飼い主さんを不安にさせてしまった」事実に胸が締めつけられる思いです。

トリマーも人間です。どれだけ気をつけていても、見落としや判断ミスがゼロとは言い切れません。しかし、プロとして大切なのは「起こったことから逃げない姿勢」。誠意ある対応とは、単に謝罪するだけでなく、状況の確認・原因の説明・再発防止への取り組みまでを含めて、責任を持つことだと考えています。

ひろこ

トラブルが起きたときこそ、冷静に状況を振り返り、施術中の記録や写真、当日のメモなどを見返しましょう。自分の行動を客観的に確認することで、事実に基づいた説明ができます。

施術中に起る「見えないリスク」

トリミングは、カットやシャンプーだけでなく、動物の体調や皮膚・被毛の状態を観察しながら進める繊細な仕事です。特に皮膚の弱い子や、もつれ・毛玉が多い場合、シャンプー後やドライヤーの熱で赤みが出ることもあります。また、施術前には見えなかった小さな傷が、毛をカットした後に初めて露出することもあります。

待機中や移動中のケージ内で自分で引っ掻いたり、興奮してぶつけたりすることで傷ができる場合もあります。こうしたリスクは、どんなに注意していても完全にゼロにはできません。そのため、トリミング前後の「見える対応」と「記録」が、飼い主さんとの信頼を築くうえで非常に大切です。

実例:誠意ある対応が信頼を生む

ある日、常連のワンちゃんのトリミング後、飼い主さんから「おなかに赤い擦り傷がある」とご連絡をいただきました。施術中に異常は見られず、記録にも特筆すべき変化はありませんでしたが、「気づかなかった」で済ませることはできません。

すぐにサロンに足を運んでいただき、状態を一緒に確認。ワンちゃんの皮膚はもともと薄く、シャンプー時の摩擦が原因になった可能性もあることを丁寧にご説明し、必要であれば動物病院の受診をおすすめしました。誠意をもって話すことで、最終的に飼い主さんから「きちんと向き合ってくれてありがとう」とお言葉をいただくことができました。

「見える対応」と記録が信頼関係のカギ

こうしたトラブルを防ぐために大切なのは、「情報の透明性」です。トリミング前に皮膚や被毛の状態をチェックし、気づいたことはすべて記録し、写真に残す。施術後にも再度チェックを行い、「少し赤みがあったので冷やしました」などの対応を報告する。言葉だけでなく、写真や記録を共有することで、トリマーの誠実な姿勢が伝わりやすくなります。

また、万が一の時も「この子の皮膚はこういう特徴がある」と根拠を持って説明できるため、飼い主さんの不安を和らげることができます。こうした「見える対応」こそが、信頼関係を築くうえで欠かせない要素です。

ひろこ

トリミング前後のチェックリストや写真記録を習慣化しましょう。小さな変化も見逃さず、飼い主さまと共有することで安心感を生みます。

飼い主さんと築く協力関係の大切さ

トリミングのリスクを最小限に抑えるには、飼い主さんとの協力が不可欠です。事前カウンセリングでは「どこか痒がっているところはないか」「皮膚の炎症や赤みがないか」などの確認をお願いし、少しの変化でも遠慮なく伝えていただける関係性を築くことが、より安全な施術につながります。

「お腹をよく舐めている」「散歩で転んだ」など、何気ない情報が大きなヒントになることも。トリマーだけで完結しない「共有するケア」が、結果的にトラブル防止へとつながるのです。

ひろこ

施術前に「最近の様子」を具体的に伝えてもらうよう、カウンセリングシートやヒアリングを工夫しましょう。小さな情報が大きなリスク回避につながります。

トリマーの覚悟

トリマーも人間です。どれだけ経験を積んでも、見落としやミスがゼロになることはありません。しかし、プロとして大切なのは「起こったことから逃げず、誠実に向き合う姿勢」です。状況の確認、原因の説明、再発防止への取り組み…そのすべてが誠実さを示す手段だと考えています。

また、トラブルが起きた際には、サロン全体で情報を共有し、同じことが繰り返されないよう改善策を話し合うことも欠かせません。スタッフ間の連携や、最新のトリミング技術・知識のアップデートも、リスク軽減のために重要です。

まとめ

トリマーの身に覚えのない怪我は、決して他人事ではありません。どんなに注意しても起こり得るリスクだからこそ、日々の接し方や説明、記録、そして誠意ある対応が信頼関係の土台となります。飼い主さんに「このトリマーさんなら安心」と思っていただけるよう、見えない部分まで丁寧に向き合う姿勢を大切にしましょう。

怪我のない施術を目指すのは当然のこと。そのうえで、万が一があったときにも「この人なら信じられる」と思ってもらえる存在でありたい…それが、私たちトリマーの目指す理想です。最後までお読みいただきありがとうございました☺

この記事を書いた人

トリマー ひろこ

大学卒業後、「走れ!T校バスケット部」作者のもと、アシンスタントとして勤仕。数年後、昔から夢だったトリマーを目指し専門学校に入学。JKCトリマー・ハンドラー資格取得。トリミングサロン、動物病院、個人店経営の経験後、現在は母校の専門学校で運営の手伝いをしながら、記事を制作。18歳の息子をもつシングルマザー。