老犬になると多くの犬が歯や口腔トラブルを抱えるようになります。その中でも特に深刻なのが「歯周病」です。歯周病は進行性の病気で、放置すると歯の脱落だけでなく、全身の臓器にも悪影響を及ぼす可能性があります。
今回の記事では、老犬に多い歯周病の原因、重度症状の特徴、治療の選択肢、そして家庭でできるケアまで詳しく解説します。
老犬に歯周病が多い理由
老犬は若い犬に比べて歯周病のリスクが高くなります。その背景には加齢による体の変化や、長年の口腔ケアの蓄積が関係しています。ここでは、なぜ老犬に歯周病が多くなるのか、主な原因を詳しく解説します。
1.加齢による免疫力の低下
年齢を重ねることで犬の免疫力は徐々に低下します。免疫力が低下すると口腔内の細菌をコントロールしにくくなり、炎症が起きやすくなります。特に口腔内は湿度や温度が一定で細菌が繁殖しやすいため、免疫の弱い老犬ほど歯周病が進行しやすくなります。
2.長年の歯垢・歯石の蓄積
若い頃に十分な歯磨きや歯石除去をしていないと、歯垢や歯石が蓄積します。これらは時間とともに硬化して歯や歯茎にダメージを与え、老犬期になると炎症や出血、口臭として表面化します。
3.唾液分泌の減少
老犬は唾液の分泌量が減ることがあります。唾液には口腔内を洗浄し、細菌の増殖を抑える自浄作用がありますが、それが弱まることで歯周病が進みやすくなります。飲水量が減ることで口腔内の乾燥が進み、細菌繁殖の温床となる場合があります。
歯石や口臭だけでなく、「歯茎の赤み」「よだれ」「顔を触られるのを嫌がる」といった小さな変化も見逃さず、定期的に口腔チェックを行うことが早期発見・早期治療につながります。
老犬の重度歯周病で見られる症状
歯周病が進行すると、口腔内だけでなく全身にも影響を及ぼすことがあります。ここでは、老犬の重度歯周病で現れやすい症状を詳しく解説し、飼い主が見逃してはいけないポイントを紹介します。
1.食欲の低下・食べづらそうにする
歯周病で歯茎が痛むと、硬いフードを避け、柔らかい食べ物しか食べなくなることがあります。慢性的な痛みは体重減少や栄養不足を招く可能性があるため、早めの対応が重要です。
2.歯の動揺や脱落
重度の歯周病では歯がぐらつき、やがて自然に抜け落ちることがあります。これにより噛む力が低下し、食事やおやつの食べ方が変化する場合があります。
3.強い口臭
歯周病が進行すると、腐敗臭に近い独特の口臭が出ることがあります。口臭は初期の歯周病でも発生するため、日常的にチェックすることが重要です。
4.鼻炎やくしゃみ、顔の腫れ
歯根の炎症が副鼻腔に広がると、鼻炎や膿瘍を引き起こすことがあります。鼻水の色が濁る、くしゃみが増える、顔の片側が腫れるなどの症状は早めの診察が必要です。
5.全身への影響
歯周病菌が血流に乗って全身に回ると、心臓や腎臓、肝臓に悪影響を及ぼす可能性があります。特に老犬は基礎疾患を持つことが多く、全身への負担が増えるため注意が必要です。
老犬の重度歯周病と治療法
老犬の重度歯周病は放置すると生活の質を大きく下げ、全身の健康にも影響を及ぼします。ここでは、治療の選択肢や注意点を詳しく解説します。
動物病院での基本的な治療
- 歯石除去(スケーリング)
麻酔下で歯石や歯垢を徹底的に取り除きます。歯茎の奥まで洗浄することで炎症の進行を抑えます。進行度によっては抜歯を伴うこともあります。 - 抜歯
感染源となる歯を抜くことで痛みや炎症を取り除きます。抜歯後も適切なケアを続けることで残存歯や口腔内の健康を維持できます。 - 投薬治療(抗生物質・消炎薬)
全身麻酔が難しい老犬の場合、薬で炎症や痛みを抑えることがあります。ただし、根本的な改善ではなく、一時的な症状緩和に留まる場合が多いです。
老犬への全身麻酔はリスクが伴います。処置前には血液検査や心臓の検査を行い、安全性を確認してから治療を受けるようにしましょう。麻酔リスクが高い場合は、歯磨きやデンタルケア製品を組み合わせた日常ケアで症状の悪化を防ぐことも重要です。
家庭でできる老犬の歯周病ケア方法
老犬は歯周病が進行しやすいため、家庭でできる日常的なケアが非常に重要です。ここでは、毎日の習慣として取り入れやすい歯周病ケアの方法を具体的に解説します。
1.歯みがきを習慣にする
老犬には毎日の歯みがきが理想ですが、口を触られるのを嫌がる場合もあります。そんなときは、無理に歯ブラシを使わず、ガーゼやデンタルシートで軽く歯の表面を拭くだけでも効果があります。また、歯みがきペーストには犬用の安全なフレーバー付きのものを使うと、ストレスを軽減しやすくなります。
2.デンタルガムやサプリメントの活用
噛むことで歯垢の沈着を抑えるデンタルガムや、口腔内の健康をサポートするサプリメントも有効です。老犬は咀嚼力が弱くなることもあるため、硬さや形状に配慮した製品を選びましょう。長期的に続けることで、歯石や口臭の予防につながります。
3.食事の工夫
老犬には歯や歯茎への負担を減らすため、柔らかいフードやペースト状フードを選ぶことも大切です。また、歯周病予防効果を意識した療法食や、噛む力を適度に使う硬さのフードを組み合わせると、口腔ケアと栄養補給を同時に行えます。
「完璧な歯みがき」よりも「毎日少しでも続ける」ことが重要です。愛犬が嫌がらずに続けられる方法を見つけ、習慣化しましょう。
歯周病進行度に応じた具体的なケア方法
老犬の歯周病は進行度によって対応が変わります。早期段階では家庭でのケアが中心ですが、進行すると獣医師による治療が必須になります。ここでは、症状の進行度ごとのケア方法を具体的に解説します。
1.軽度(歯垢が少量・歯茎に軽い赤み)
- 家庭でのケアが中心
- 毎日の歯みがき(ガーゼや犬用歯ブラシ)
- デンタルガムや噛むおもちゃで歯垢予防
- 食後の軽い口腔清掃
- ポイント
- 毎日の少しの習慣が進行防止に直結します。
- フード選びも重要で、噛む回数が増える硬めのフードが口腔内を刺激し、歯垢をつきにくくします。
2.中等度(歯石が付着・歯茎の腫れ・口臭が目立つ)
- 家庭ケアと動物病院の併用
- 定期的な歯みがきは継続
- デンタルガム・口腔ケアサプリの併用
- 動物病院でのスケーリング(麻酔下で歯石除去)を検討
- ポイント
- 口臭や出血がある場合は早めに病院で評価を受けましょう。
- 家庭ケアだけでの改善は難しい場合が多いため、獣医師の指導が安全です。
3.重度(歯のぐらつき・膿・強い口臭・食欲低下)
- 動物病院での専門治療が中心
- 麻酔下でのスケーリング・抜歯
- 抗生物質や消炎薬による投薬治療
- 食事の工夫(柔らかい療法食)
- 家庭でのサポート
- 食後の口腔ケア
- デンタルジェルやサプリで炎症抑制の補助
- ポイント
- 高齢犬の場合、麻酔リスクを事前検査で評価する
- 治療後も家庭でのケアを継続し、再発防止に努める
進行度に応じて、家庭ケアだけで済む場合と獣医師の治療が必要な場合があります。症状を見極め、早めの対応を心がけることで老犬の生活の質を大きく維持できます。
まとめ
重度の歯周病は老犬にとって深刻な問題ですが、適切な治療と日常的なケアを組み合わせることで、生活の質を維持することができます。治療の選択肢は重度の場合でも存在し、日々の口腔ケアを継続することで再発を防ぐことが可能です。
飼い主の意識次第で老後の生活の質は大きく変わるため、愛犬の健康寿命を守るために、今からできる小さなケアを習慣化していくことが大切です。最後までお読みいただきありがとうございました☺