【それって違法!?】自宅トリミングサロン開業のために、知っておくべき法律

トリマーさんが誰もが夢見るトリミングサロンの開業。しかし、開業資金など現実的にはハードルも高いことでしょう。

そこで「自宅でトリミングサロンを開いてはどうだろう?と考えるトリマーさんも多いと思います。だけどちょっと待って!!

あなたの自宅でトリミングサロンを運営すると違法になってしまうかもしれません。

関係する法律は二つ

自宅でトリミングサロンを運営する気にしないといけない法律は二つあります。『動物管理愛護法』における「第一種動物取扱業」の資格取得の必要性と、『建築基準法』における自宅の「用途地域」の確認です。

このページをご覧になっている方は、トリマーさんかトリミング業界関係の方でしょうから「第一種動物取扱業」に関しては詳しい方も多いのではないでしょうか。
しかしながら『建築基準法』における「用途地域」はご存知でない方も多くいらっしゃいます。知らずに開業してしまうと違法状態となり、やむなく閉店しなければいけないことなるかもしれません。

自宅トリミングサロン開業を検討されている方は、しっかりとこの記事を読んでいただくことをお勧めします。

第一種動物取扱業の資格取得

自宅に関わらず動物を飼い主さんから預かって施術を行うには、「第一種動物取扱業」の資格を取得する必要があります。
「第一種動物取扱業」の資格を取得するには、下記のいずれかの要件を満たした人物が「動物取扱責任者」となる必要があります。

  1. 獣医師免許の取得者
  2. 愛玩動物看護師免許の取得者
  3. 実務経験+教育機関の卒業
  4. 実務経験+動物に関する資格

「第一種動物取扱業」の資格取得方法については他サイトにもたくさん記事がありますし、ここでは詳しく述べないこととします。詳細を確認したい方は、下記の環境省のサイトでご確認ください。

見落としがちな『建築基準法』の「用途地域」

自宅トリミングサロンに関係する法律は建築基準法48条と130条に書いてあります。

建築基準法48条

建築基準法48条1項には下記のように書かれています。

第四十八条 第一種低層住居専用地域内においては、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。

建築基準法48条1項

「第一種低層住宅専用地域」とは、概ね戸建の住宅が並ぶ地域のことです。この地域では別表第二(い)以外は建築してはダメだと書いてあります。別表第二(い)とは下記です。

一 住宅
二 住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの
三 共同住宅、寄宿舎又は下宿
四 学校(大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校を除く。)、図書館その他これらに類するもの
五 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
六 老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの
七 公衆浴場(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第六項第一号に該当する営業(以下この表において「個室付浴場業」という。)に係るものを除く。)
八 診療所
九 巡査派出所、公衆電話所その他これらに類する政令で定める公益上必要な建築物
十 前各号の建築物に附属するもの(政令で定めるものを除く。)
建築基準法別表第二(い)

ここでは、住宅か住民生活に近い目的のものしか建築してはならないとなっています。自宅はもちろん住宅に当てはまるため、トリミングサロンを運営してはならないことになっています。

建築基準法130条

また、建築基準法130条には下記のように書かれています。

(第一種低層住居専用地域内に建築することができる兼用住宅)
第百三十条の三 法別表第二(い)項第二号(法第八十七条第二項又は第三項において法第四十八条第一項の規定を準用する場合を含む。)の規定により政令で定める住宅は、延べ面積の二分の一以上を居住の用に供し、かつ、次の各号のいずれかに掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が五十平方メートルを超えるものを除く。)とする。
一 事務所(汚物運搬用自動車、危険物運搬用自動車その他これらに類する自動車で国土交通大臣の指定するもののための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く。)
二 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店
三 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗
四 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店その他これらに類するサービス業を営む店舗(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)
五 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む。以下同じ。)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)
六 学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設
七 美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ又は工房(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が〇・七五キロワット以下のものに限る。)

建築基準法130条の3

こちらにも自宅トリミングサロンに当てはまる建築物が記載されておらず、建築が不可、つまりすでに建築されている住宅で開業してはならないということです。

これは自宅サロンを開業にするにあたっては見落としがちな内容でしょう。

自宅トリミングサロンを運営してはダメな用途地域と調べ方

トリミングサロンを運営してはダメな地域は「第一種低層住宅専用地域」だけではありません。運営してはダメな地域をまとめました。

用途地域自宅サロンを運営してよいか
第一種低層住居専用地域開業不可×
第二種低層住居専用地域開業不可×
第一種中高層住居専用地域開業不可×
第二種中高層住居専用地域開業可能◯
第一種住居地域開業可能◯
第二種住居地域開業可能◯
準住居地域開業可能◯
田園住居地域開業不可×
近隣商業地域開業可能◯
商業地域開業可能◯
準工業地域開業可能◯
工業地域開業可能◯
工業専用地域開業可能◯
用途地域と自宅トリミングサロン開業可否

第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、田園住居地域では、自宅トリミングサロンの運営ができないとされています。

ご自身の自宅が、どの用途地域であるかは概ね市町村のホームページで調べることができます。しかし地域ごとにサイトが異なっており、閲覧方法も違うので大変探しにくいです。

自宅の用途地域の調べ方

日本全国の用途地域をまとめて調べることができる便利なサイトを見つけたので、下記からご自身の住所を入力して調べてみてください。

用途地域がダメでも、自宅サロンを開業する方法

用途地域がダメであった場合、本当に自宅サロンを開業できないのでしょうか。
上記の建築基準法48条『建築基準法別表第二(い)』の2項には「住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの」と書いてあります。また、建築基準法130条の3の3項には「理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗」と書かれています。
トリミングサロンがこの解釈のなかに含まれた場合は開業が許されるケースがあるようです。

大阪府箕面市では、用途地域がダメでも開業OKだった

全国を調べると、大阪府箕面市では用途地域でトリミングサロンがダメとされている地域でも、下記の条件を守れば開業できると公表しています。


引用:https://www.city.minoh.lg.jp/kaisi/documents/48petsisetsu.pdf

このように開業できる事例を確認しましたが、他の地域では市役所に尋ねると概ね不可と答えられるケースが多いようです。
大阪府箕面市以外でも、どの用途地域でも開業する方法はあるのでしょうか。

国土交通省へ正式に確認をとった

当社では用途地域の監督官庁である国土交通省に確認をとりました。一般の窓口では、なかなか正確に把握できないので、経済産業省の規制緩和サポートの人脈から国土交通省の担当者にアポをとり内容を確認しました。

すると国土交通省の回答では、第一種低層住居専用地域などでトリミングサロンおよび動物病院は建築不可であるという認識がされており、その根拠となる資料も共有してもらいました。

下記は各地域の行政区へ配布されている今回の建築基準法の解釈に対する資料です。

引用:基準総則集団規定の適用事例(一般社団法人建築行政情報センター)

この資料によると、トリミングサロンは該当する建築基準法ので建築物に該当しないと明記されており、許可を獲得することが困難であることがわかります。

完璧に合法で!自宅トリミングサロンを運営する方法

「自宅でトリミングサロンを開きたい」と思っても、住宅専用地域の場合、完全に安心して開業することは困難そうです。

そこで注目されているのが、“建物ではなく車両を使う”という発想です。
特に最近では、トリミング設備を備えた「トリミングカー」や、荷台に積載する「シェル(上物:車に載せたり降ろしたりできる箱型ユニット)」を活用するアイデアが広まっています。

ただし、置き方や使い方によって、建築物扱いになるかどうか、つまり合法か違法かの線引きが変わります。
ここでは、実際に考えられる3つの方法を整理してご紹介します。

トリミングカーを敷地に置いて、開業する

方法① 車のまま駐車して営業する

  • 概要:ナンバー付きのトリミングカーをそのまま自宅の駐車場に置き、車内で施術を行う方法。
  • ポイント
    • 自走でき、いつでも移動できる状態を維持することが大切。
    • 水や電気はタンクや発電機でまかなうか、仮設接続にとどめる。
    • 常設の配管や屋根を付けると「建築物」とみなされる可能性がある。
  • メリット:用途地域の「建築物制限」を受けにくく、合法性が高い。
  • デメリット:給排水・電源の管理を自分で工夫する必要がある。

方法② シェル(上物)を敷地に置くが、車に載せ替え可能にする

  • 概要:シェル(トリミングカーの荷台部分だけを切り離したユニット)を一旦地面に置き、使うときは車に載せて移動できる形態。
  • ポイント
    • 「移動できる形」を保つことが重要。例えば、タイヤ付き台座に置く、クレーン等で載せ替え可能にする等。
    • 常設の基礎に固定すると建築物扱いになるため注意。
    • 上物の大きさや重量、搬出入のしやすさが実務上の課題。
  • メリット:建築物とみなされにくい工夫ができれば、自宅営業の可能性が残る。
  • デメリット:グレーゾーンだが、運用上に大きな問題とされにくい。

方法③ シェル(上物)を固定して据え付ける(移動できない状態)

  • 概要:シェルを基礎の上に据え付け、上下水や電気を常時接続して使う形態。
  • ポイント
    • 「随時移動できない」状態=建築物とされる(国交省通知の基準)。
    • 建築確認が必要となり、用途地域の制限をフルに受ける。
    • 第一種・第二種低層住居専用地域などでは、そもそもサロン用途は不可。
  • メリット:設備をしっかり整えられるため、店舗と同等の環境で営業できる。
  • デメリット:住宅専用地域では原則不可能。設置費用や許可申請のハードルも高い。

方法具体例建築物扱い合法性
① 車のまま駐車ナンバー付きトリミングカー建築物にあたりにくい◎ 条件を守れば合法性は高い
② 可搬シェル車に載せ替え可能なシェル移動可能なら建築物扱いされにくい⚪︎ 多くの場合で実現可能
③ 固定シェル基礎+上下水設備接続建築物扱い× 住宅専用地域では不可
トリミングカーの設置方法による合法性の違い

1台限り!トリミングカーを譲渡します。

当社ではトリミングカーを複数所有しており、シェル(上物)を簡単に積み下ろしできるトリミングカーを有償にて譲渡します。
詳しい情報は下記のボタンから閲覧してくださいませ。

\敷地に設置可能なトリミングカー/

この記事を書いた人

山瀬 穂高

株式会社ホームトリマーの代表取締役。
株式会社リクルートで人材部門や企画開発に携わる。その後、独立して株式会社ホームトリマーを設立。「自宅出張トリミング」というビジネスモデルから、ペット事業の展開を図る。