私達トリマーは、動物の健康と美容を維持して守るために汗水流しながら日々頑張っています。しかしながら、すべてが順調にうまくいくことばかりではありません。
トリマーになってからが困難の連続なのです。前回の記事では、【トリマー】とは?どんな仕事なの?トリミングをして「嬉しかったこと・辛かったこと」ランキングTOP5をテーマにお伝えしました。苦労して夢のトリマーになったはずなのに……こんなはずじゃ……
今回の記事では「トリマーの大変なこと」をテーマに“実体験”を踏まえてご紹介していきます。
体力勝負・ケガ
トリマーになって、はじめにブチあたる壁は「体力」と「ケガ」ではないでしょうか。トリマーは立ちっぱなしの状態が続くので(いまは椅子に座るところも多くなってきましたが)なりたての頃は足がパンパンにむくみます。慣れないことも多いので精神的にも疲れます。意外と目が疲れたり、首や肩がとても痛くなります。
かがんでトリミングしているため全身に負担がかかります。大型犬や体重が重い犬のトリミングをすると、かなり体力を消耗します。
翌日、全身筋肉痛で仕事が辛い!なんてこともあります。トリマーになりたての頃は、“手順”や“保定”も上手くないため、自分自身のケガも多くなります。
私がはじめて噛まれたのは、専門学校に通っていた頃です。シュナウザーのカットをしたとき、何も分からず毛玉をコームで引っ張ってしまい噛まれました。
ケガをしたときは、すぐに消毒をしましょう。爪が長い犬の場合、シャンプーのときや抱きかかえるときに引っかき傷ができてしまいます。
ケージから犬を出す時に、不意打ちで噛む子もいます。その時は「リードで引っ張り出す」か「タオルを手に巻き噛まれないようにする」などの工夫をして対応しています。
腱鞘炎・腰痛
腱鞘炎
トリマーの基本はハサミ作業です。ある程度ハサミが使えるようになったら、とにかく手を動かし、慣れるようにします。ストレートバサミは、短時間でカットの形が決まりますが、はじめの頃は“跡”が付いたりハサミの動かし方が“不安定”なので、すきバサミを使いがちです。
すきバサミでも問題はないのですが、面が揃わないのと時間がかかりすぎるので、なるべくストレートバサミでカットすることを心がけています。
毛量が多い犬は、とにかくカットをしないと終りが見えないので、ひたすら切ります。年末や夏にかけては、お客さんが増えるので、カットしすぎてハサミがダメになることも。腱鞘炎に悩むトリマーは多いです。
年末や夏にかけては、ハサミを見るのも嫌になってきます。(ハサミ恐怖症)ハサミより“毛“恐怖症?になることも。
腰痛
立ちっぱなしや体重が重いコを持ち上げると、腰に大きな負担がかかります。大型犬を一人でシャンプーするときも、腰痛は酷くなります。かがんでカットするときも同様です。同じ体勢で、中腰になってトリミングすることが多いので腰に負担がかかりやすくなります。
ひろこ
シャンプー中の大型犬は狂気そのものです。
腱鞘炎と腰痛は、トリマーの「職業病」です。いかに対策して負担をかけないかが重要ですね。
臭い・不衛生
トリマーは俗に言う“3K”…を通り越して“5K”といわれています。3Kとは「きつい、汚い、危険」の略語ですが、トリマーはさらに「きつい、汚い、危険、くさい、厳しい」の“5k”なのです。
ペットを飼ったことがある人ならご存知かと思いますが、「犬独特の匂い」がありますよね?いまは慣れて麻痺していますが、当初は臭いがキツイと感じていました。
公共機関を利用するときは、常に周りを気にしながら乗っています。皮膚疾患がある犬や、汚れた犬を洗うときは、自身の体に臭いや菌がつかないよう念入りに洗います。
または、エプロンをするなどして気をつけていますが、どんなに工夫しても臭いは消えないものです。肛門腺を出すときも注意が必要です。顔にかかったり、髪の毛まで飛ぶ可能性があります。犬種によって肛門腺の臭いが異なることもあります。
排泄問題は、これもトリマーはやっていくうちに慣れていくしかありません。最近はオムツを使っている犬が多いですが、糞尿処理はトリマーに欠かせない「業務の一環」です。
肌トラブル・アレルギー
肌トラブルは、腱鞘炎・腰痛と連なる大きな苦悩です。肌が弱い人は特に注意が必要です。湿疹ができたり、なかには痛みを感じる人もいるかもしれません。
鼻がムズムズしたり、痒くなる症状もでます。アレルギーの持病がある人は医師と相談のもと投薬しながらトリマーを続けたほうが良いでしょう。
花粉の時期は最悪です。ダブルで鼻と目が痒くなるので仕事するのが辛いです
犬の対応
暴れ犬や、噛み犬もいますが、頭を悩ませるのは通称「チャカチャカ犬」。その名の通り、落ち着きがなく“チャカチャカ”と動く犬は保定が難しいです。
じっとしていられない犬をトリミングするときのコツは、とにかくできる箇所をしていくしかありません。ドライできる箇所、カットできる箇所、を手順を無視してやれるところを素早くやるしかないのです。
動くからといって、力強く保定してしまうと犬もトリマーも疲れてしまうので気をつけなければなりません。
病気の犬や扱いに苦労する犬に対しても、時間内に仕上げて返さなければならないのがとっても大変。
人間関係
【トリマーの】退職理由1位!!複雑な人間関係とその対策とは?でお伝えしましたが、人間関係の悩みで退職する人は多いです。トリマーに限らず、自分価値観が合わない人と円満な人間関係を築くのは大変なことです。
トリマーの場合飼い主さん対応もあるので、接客や人間関係といった人とのコミニケーションが必須です。内向的な性格のトリマーだと、緊張感を持ちながらカットし接客もこなしながら、さらにトリマー内の人間関係も構築するので思った以上にストレスがかかります。
嫌な思いをしたことは数え切れないほどあります。
気持ちの切り替えを上手にこなさないとトリマーは務まりません。自分の中でオンオフを切り替えて業務にのぞむようにしましょう。
接客
トリマーの接客は、時に毅然とした態度で臨まないといけません。お客様商売なので、理不尽なことをいわれることもあります。しかし、トリマーは命を預かる大切な仕事です。できないこと、ダメなことは毅然とした“態度”と“言葉”で伝える必要があります。
曖昧にすると、お互いによくないと感じます。伝える言葉は同じでも、伝え方でだいぶ印象が変わりますよね。常に「自分がお客様だったら、どのような接客をされたいか」を意識して、愛想よく且つ明確に伝えるように努力しましょう。
私が日頃気をつけているのは、「怒る」と「叱る」の違いです。怒る=自分の感情をぶつけること、「叱る」=相手のことを思って伝えること、だと考えています。
福利厚生
夢を持ってトリマーになっても、お給料が安く、休みがとれないと長く勤めることができません。トリマー界も昔と違いお給料や福利厚生がだいぶ改善されてきました。
あるお店のオープニングに携わったことがあります。経営するにあたり、一番コストがかかるのは人件費です。その人件費を払えない、最低賃金ギリギリのサロンや病院、個人経営店で働くことは避けた方が良いでしょう。
また、オーナーはトリマー経験者の方が気持ちを理解してくれます。無理な予約を入れたり、無茶な雑用を押し付けることは少ないと感じます。
トリマーは優しい人が多いですが、勇気をだして給料改善を要求したり、休日も法に基づいてキチンと申請しましょう。声をあげなければ改善されることはありません。
給料未払いで弁護士さんにお願いしたことがあります。トリマーの友人は、オーナーが行方不明になって半年もの間給料未払いだったそうです。
まとめ
今回の記事では「トリマーの大変なこと」を8選をお伝えしました。トリマーは大変なこともありますが、やりがいは“必ず”あります。トリマーという職種がダメなわけではなく「居場所」に問題があるはずです。自分にとって居心地が良い職場環境を見つけて働けば、犬に癒やされて、幸せな時間を過ごすことができますよ。
最後までお読みいただきありがとうございました☺