犬の口の健康は、見た目や口臭の問題だけにとどまりません。実は、3歳以上の犬のおよそ8割が歯周病を抱えていると言われています。歯周病は、歯ぐきの炎症や歯のぐらつきだけでなく、放置することで心臓や腎臓などの重大な疾患を引き起こす可能性もある怖い病気です。
今回の記事では、「犬歯周病治療費用」に焦点を当て、治療にかかる金額や保険の適用、そして高額な治療を避けるための予防策までを丁寧に解説します。愛犬の健康を守りながら、飼い主の経済的負担も軽減するための知識を一緒に深めていきましょう。
歯周病の治療にかかる費用とは?
犬の歯周病治療は、症状の進行度によって治療方法が大きく異なります。そのため、かかる費用にもかなり幅があります。以下は、治療内容ごとのおおよその目安です。
軽度の歯周病では、主に歯石除去や歯肉炎の治療が中心となります。この段階では、全身麻酔を使わずに処置が行われることもあり、費用は比較的抑えられます。一般的には3万円から5万円ほどが目安となります。
中度の歯周病になると、歯周ポケットが深くなり、細菌感染が進行しているケースが多く見られます。この場合、抜歯が必要となることもあり、レントゲン検査や抗生物質の投与なども含まれます。費用は7万~10万円程度を見込んでおきましょう。
重度の歯周病になると、複数の歯を抜歯したり、歯ぐきや顎の骨まで炎症が及んでいたりと、手術が必要なケースも出てきます。この場合は全身麻酔が長時間におよび、術後の入院が必要になることもあります。トータルの費用は15万~23万円とかなり高額です。
治療費を抑えるには、やはり早期発見・早期治療が鍵です。初期のうちに歯石除去を済ませておけば、抜歯や外科的処置といった大がかりな治療を避けられます。
人間と同じく、犬も年齢とともに歯のトラブルが増えてきます。特に3歳を過ぎたら、歯科検診の頻度を年に2回に増やすことで、軽度のうちに発見・治療が可能になります。
歯周病の治療費に保険は使える?
意外と見落としがちなのが、ペット保険の補償範囲です。多くの保険会社では、歯周病を含む歯科治療を「補償対象外」としている場合が少なくありません。これは、歯の治療が“予防処置”とみなされることが多いためです。
ただし、すべてが補償されないわけではありません。以下のようなケースでは、補償の対象となる可能性があります。
- 歯周病の症状が進行し、獣医師が「治療の必要がある」と判断した歯石除去
- 歯周病に伴う歯根膿瘍や顎骨の異常によって必要となった抜歯手術
一方で、見た目をきれいにするための審美目的の処置や、定期的な予防クリーニングは補償対象外です。
某保険会社の例を挙げると、歯周病の手術治療に対して最大70%の補償がされるケースがあります。また、ある損保でも重度の歯周病に対する手術を対象とし、約50%が保険でまかなわれるプランもあります。
ただし、これらは保険商品やプランによって補償内容が異なるため、加入前には細かく約款を確認することが重要です。特に注意したいのは、「既往症は対象外」とされる点。加入前にすでに歯周病が見つかっていた場合、その後の治療は補償されないことがあります。
歯周病を未然に防ぐ3つのステップ
愛犬の歯を健康に保つためには、日々のケアと定期的なチェックが欠かせません。犬の歯周病は進行すると高額な治療が必要になるケースも多く、予防こそが最善の対策です。
このセクションでは、飼い主がすぐに実践できる「歯磨き習慣」「デンタルグッズの活用」「動物病院での定期検診」の3つのステップをご紹介します。無理なく続けられる方法で、愛犬の口腔環境をしっかり守りましょう。
1. 歯磨き習慣を定着させる
犬の歯周病予防でもっとも基本かつ効果的なのが、日々の歯磨きです。歯垢が歯石へと変化するのを防ぐことで、歯肉炎や歯槽膿漏のリスクを大幅に減らすことができます。
最初は嫌がる犬も多いですが、指に巻いたガーゼや指サック型の歯ブラシなどで少しずつ慣れさせましょう。いきなり歯ブラシを使うのではなく、口元を触られることに慣れるところからスタートするのが成功のコツです。
2. デンタルグッズの活用
忙しい日常の中で毎日の歯磨きが難しいと感じる場合は、補助的なケア用品を活用しましょう。たとえば、噛むことで歯垢を落とす歯磨きガムや、抗菌成分を含んだマウススプレーなどがあります。
最近では、飲み水に混ぜるだけで口腔ケアができるリキッドタイプの商品や、歯垢を染めて磨き残しを目視できる歯垢チェッカーも人気です。
3. 動物病院での定期検診
目に見えるトラブルがなくても、年に1~2回は動物病院で歯科検診を受けるのが理想です。麻酔を使わない超音波スケーリング(1回5,000円~1万円)などのプロケアによって、歯石の除去と口腔内の健康管理が可能です。
早期に歯周病の兆候を発見できれば、軽度の処置で済むため経済的にも負担が少なくて済みます。
噛むことで歯垢を落とす「デンタルおやつ」は、歯磨きが苦手な犬にも最適。毎日のごほうび代わりに使えば、無理なくケア習慣が身につきます。
歯周病の治療費が高額になる要因と対策
犬の歯周病は、見過ごしていると治療費が想像以上に高額になることがあります。麻酔費用や通院の回数、さらには全身への合併症による追加の医療費など、重症化するほど経済的な負担が大きくなるのが現実です。
ここでは、費用がかさむ具体的な要因と、それを未然に防ぐために飼い主さんができる対策について詳しく解説します。
要因1 全身麻酔の費用が高い
犬の歯周病治療では、痛みや動きを抑えるために全身麻酔を行うのが一般的です。体重が5kg前後の小型犬でも麻酔費用だけで2万円前後かかる場合があります。中型犬や大型犬になるとさらに高額になります。
これを避けるには、若いうちに軽度の歯石を除去しておくことが肝心です。高齢になると麻酔のリスクも高くなり、そもそも処置ができないケースもあります。
要因2 通院回数が増えるケース
重度の歯周病では、1回の治療で完了することは少なく、複数回の通院が必要になります。再診料、薬代、検査費などが積み重なり、最終的な支払額が10万円を超えることも珍しくありません。
治療が始まる前に、動物病院に治療計画と見積もりを確認しておくと安心です。
要因3 歯周病による合併症
口腔内の細菌が血流を介して体内を巡ると、心内膜炎や腎臓病、肝炎といった全身疾患を引き起こすリスクも高まります。そうなると、歯の治療費に加えてさらなる医療費が発生し、負担が大きくなってしまいます。
そのため、「たかが歯の問題」と軽視せず、口臭や歯茎の出血、よだれの増加といった初期症状に気づいたら、すぐに動物病院で診てもらうことが大切です。
歯周病治療は設備や技術によって費用や結果が大きく変わります。事前に口コミやホームページで「歯科に力を入れているか」をチェックすると、安心して治療を受けられます。
まとめ
犬の歯周病は、軽度でも数万円、重度になると20万円以上の費用がかかる可能性のある深刻な病気です。しかし、毎日の丁寧な歯磨きや定期的な口腔チェックを習慣化することで、予防や早期発見が十分に可能です。
また、ペット保険に加入する際は、歯科治療が補償の対象かどうかをしっかり確認しておきましょう。歯周病を未然に防ぐことは、愛犬の健康寿命を延ばすだけでなく、飼い主さんの家計を守ることにもつながります。
この記事を読んだ今日から、ぜひ少しずつ愛犬のデンタルケアを始めてみてください。早めの対策が、愛犬の未来を変える大きな一歩になりますよ。最後までお読みいただきありがとうございました☺