私達トリマーは、動物の健康と美容を維持して守るために、汗水流しながら日々頑張っています。しかしながら、すべてがうまくいくことばかりではありません。
「トリマーになってから」が困難の連続!前回の記事では、「トリマーとはどんな仕事なのか」をテーマに書きました。苦労して夢のトリマーになったはずなのに……こんなはずじゃ……
今回の記事では、「トリマーの大変なこと」をテーマに“実体験”を踏まえて書きつづります。

体力勝負・ケガ
トリマーになって、はじめにブチあたる壁は「体力」と「ケガ」ではないでしょうか。トリマーは立ちっぱなしの状態が続くので(いまは椅子に座るところも多くなってきましたが)
なりたての頃は足がパンパンにむくみます。慣れないことも多いので精神的にも疲れます。意外と目が疲れたり、首や肩がとても痛くなります。(私の場合は)
おそらく、かがむようにしてトリミングしているので、負担がかかっているのでしょう。大型犬や体重が重い犬のトリミングをすると、かなり体力を消耗します。
翌日、全身筋肉痛で仕事が辛い!なんてこともあります。トリマーになりたての頃は、“手順”や“保定”も上手くないため、「自分自身のケガ」も多くなります。

はじめて噛まれたのは、専門学校に通っていた頃です。シュナウザーのカットをしたとき、何も分からず毛玉をコームで引っ張ってしまったのです。
当然、痛いのでビックリして噛んでしまったのでしょう。今思うと可哀想なことをしてしまったと後悔しています。
噛まれて青あざになり、皮膚が切れました。運が悪いと縫うこともあるので「無知」は怖いと学びましたね。
ケガをしたときは、すぐに消毒をしないと化膿しますので注意が必要です。私は皮膚が弱いため、しばらく傷が残って息子に心配されることもしばしば。
爪が長いコは、シャンプーのときや抱きかかえるときに、引っかき傷ができてしまいます。これが地味に痛い。噛まれた傷も非常に痛いです。
ケージから犬を出す時に、不意打ちで噛む子もいます。その時は、「リードで引っ張り出す」か「タオルを手に巻き噛まれないようにする」などの工夫をして対応しています。
腱鞘炎・腰痛
なんとなくハサミを使えるようになったら、とにかく手を動かし、慣れるようにします。
ストレートバサミは、短時間でカットが決まりますが、はじめの頃は“あと”が付いたりハサミの動かし方が“不安定”なので、すきバサミを使いがちです。
すきバサミでも問題はないのですが、面が揃わないのと、時間がかかりすぎてしまうので、なるべくストレートバサミでカットすることを心がけています。
毛量が多い犬は、とにかくカットをしないと終りが見えないので、ひたすら切ります。年末や夏にかけては、お客さんが増えるので、カットしすぎてハサミがダメになることも。腱鞘炎に悩むトリマーは多いです。

年末や夏にかけては、ハサミを見るのも嫌になってきます。(ハサミ恐怖症)ハサミより、“毛“恐怖症?来る日も来る日も、毛に追われる日々。毛への恐怖です。(ちなみに夢にも毛がでてきます。)
立ちっぱなしや体重が重いコを持ち上げると、腰に大きな負担がかかります。大型犬を一人でシャンプーするときも、腰痛は酷くなります。
かがんでカットするときも同様。同じ体勢で中腰になってトリミングすることが多いので、腰に負担がかかりやすくなるのです。

ひろこ
シャンプー中の大型犬は狂気。泡を付けているときのブルブルは若干の悪意を感じさせます。
腱鞘炎と腰痛は、トリマーの「職業病」ですね。
臭い・不衛生
トリマーは俗に言う“3K”…いや、“5K”。3Kとは、「きつい、汚い、危険」の略語ですが、トリマーはさらに、「きつい、汚い、危険、くさい、厳しい」の険しい“5k”です。
ペットを飼ったことがある人ならご存知かと思いますが、「犬独特の匂い」がありますよね?いまはもう麻痺しましたが、当初は臭いがキツイと感じていました。
公共機関を利用するときは、常に周りを気にしながら乗っています。犬の毛アレルギーの人には大変申し訳ないです。皮膚疾患がある犬や、汚れた犬を洗うときは、自身の体に臭いや菌がつかないよう念入りに洗います。
または、エプロンをするなどして気をつけています。しかし、なかなか臭いは消えないもの。肛門腺を出すときも注意が必要です。
顔にかかったり、髪の毛まで飛ぶ可能性があります。何回も飛んで、あの強烈な匂いが鼻につきます。犬種によって肛門腺の臭いが違うのがちょっとおもしろい。クセになっている自分もいたりして。
さすがに「臭いの迷惑」をかけてしまうので、自力で落としますが、これがなかなか落ちず…。自分自身もシャンプーしなければならなくなります。

【クセになる犬種】 1位マルチーズ 2位トイプードル 3位パグ (持論)
排泄問題は、これもトリマーはやっていくうちに慣れていくしかありません。最近はオムツを使っている犬が多いですが、糞尿処理はトリマーに欠かせない「業務の一環」です。

うっかり、糞を踏んでしまったりもします。もう慣れっこになりました。息子の子育ても経験しているので、糞尿処理に抵抗がないのかもしれません。糞尿ばかりの人生です。
肌トラブル・アレルギー
肌トラブルは、腱鞘炎・腰痛と連なる大きな苦悩です。私は毛が皮膚につくと必ずニキビ(吹き出もの?)になります。犬種によっては、毛に触れただけで真っ赤になることも。じんましんや湿疹も酷いです。(ダックスやピンシャーで大量にできます)
おそらく、その犬種の毛がアレルギーなのでしょう。鼻がムズムズしたり、痒くなる症状もでます。もともと、アレルギーもちで喘息もありました。トリマーを続けていくうちに抗体ができてくるのでしょうか?
いまとなっては、肌が強くなったと感じます。個人差があるので、もし不安に思うトリマーさんがいたら病院にかかることをおススメします。

花粉の時期は最悪です。ダブルで鼻と目が痒くなるので、生きているだけで辛い
犬の対応
あらゆる犬種がきても、対応しないとならないのがトリマーです。相性の話しは以前の記事でも書きましたが、何をしても合わない犬もいるものです。
暴れ犬や、噛み犬もいますが、私が頭を悩ませるのは通称「チャカチャカ犬」。その名の通り、落ち着きがなく、“チャカチャカ”と動くことから勝手に名付けました。
じっとしていられない犬をトリミングするときのコツは、とにかくできる箇所をしていくしかありません。ドライできる箇所、カットできる箇所、を手順を無視して、やれるところを素早くやるしかないのです。
動くからといって、力強く保定してしまうと、犬もトリマーも疲れてしまうので気をつけなければなりません。

病気の犬や扱いに苦労する犬に対しても、時間内に仕上げて返さなければならないのがとっても大変。
人間関係
これも以前の記事で書きましたが、人間関係の悩みで退職する人が多いのではないでしょうか。退職理由ナンバーワンですね。
トリマーに限らず、社会人になった以上自分と合わない人がいたとしても、業務をこなし、円満に人間関係を築いていかなくてはなりません。すごく大変ですよね。
トリマーの場合、さらにお客さん対応もあるので、接客や人間関係といった人とのコミニケーションが必須です。内向的な性格のトリマーだと、緊張感を持ちながらカットし、接客もこなしながら、さらにトリマー内の人間関係も構築するので、思った以上にストレスがかかります。
なので、離職する人が後を絶ちません。なかには、高圧的なお客さんやクレーマーが存在したり…。もちろん、とっても優しいお客さんもいます。
トリマー界だけではなく、接客業をやる以上どこにでもいますよね。頭では理解しているつもりが、つい悩んでしまします。いかに、ストレスを家まで引きずらないで、気持ちの切り替えをするかが重要です。

何回か転職して嫌な目に合ったことは、数え切れないほどあります。驚くことに男性トリマーからの嫌がらせも。しかし、いいご縁もあって「善悪」を見ているようです。
気持ちを上手に切り替えないと、トリマーは務まりません。私はコーヒーを飲みながら、好きな海外ドラマを観ることで気持ちの切り替えをしています。あと、通勤時間が少し長いと「素の自分」と仕「仕事用の自分」を使い分けられるのではないでしょうか。
接客
トリマーの接客は、時に毅然とした態度で臨まないといけません。お客様商売なので、理不尽なことをいわれることもあります。
しかし、トリマーも命を預かる大切な仕事です。できないこと、ダメなことは毅然とした“態度”と“言葉”で伝える必要があります。
これを曖昧にすると、お互いによくないと個人的に感じます。伝える言葉は同じでも、伝え方でだいぶ印象が変わります。
常に「自分がお客様だったら、どのような接客をされたいか」を意識して、愛想よく且つ明確に伝えるように努力しています。

私が日頃気をつけているのは、「怒る」と「叱る」の違いです。怒る=自分の感情をぶつけること、「叱る」=相手のことを思って伝えること、だと考えています。
子育てから学びました!
福利厚生
夢を持ってトリマーになっても、お給料が安く、休みがとれないと長く勤めることができません。トリマー界も昔と違い、お給料や福利厚生がだいぶ改善されてきました。
しかし、現在も個人経営の小規模なサロンなどでは、経営することで手一杯になり、お給料まで目が回らないところもあります。
あるお店のオープニングに携わったことがあります。経営するにあたり、一番コストがかかるのは人件費です。その人件費を払えない、最低賃金ギリギリのサロンや病院、個人経営店で働くことは避けた方が良いでしょう。
また、個人的な感想ですが、オーナーはトリマー経験者の方が気持ちを理解してくれます。無理な予約を入れたり、無茶な雑用を押し付けることは少ないでしょう。(中には気持ちを理解してくれるオーナーさんもいますが)
トリマーは優しい人が多いですが、勇気をだして給料改善を要求したり、休日も法に基づいてキチンと申請しましょう。声をあげなければ、改善されることはありません。
退職する場合も、労基に訴えたり、退職理由を明確にオーナーに伝え、次に勤務する人が同じ目に合わないように、自分の退職が無駄にならないように、是非頑張って欲しいです。

給料未払いで弁護士さんにお願いしたことがあります。トリマーの友人は、オーナーが行方不明になって、半年もの間給料未払いだったそうです。恐ろしい。
まとめ
今回は「トリマーの大変なこと」を8つ選んでお伝えしました。トリマーはこの記事のように大変なこともありますが、やりがいは“必ず”あります。
トリマーという職種がダメなわけではなく、「居場所」に問題があるはずです。自分にとって居心地が良い職場環境を見つけて働けば、犬に癒やされて、幸せな時間を過ごすことができますよ。